Vol.1はじまり 僕がパソコンと出会ったのは小学6年のころ。 昭和57年とか1978年とかのころだ。計算してないけど。 当時はマイコンピューターとマイクロコンピューターという意味で、マイコンという和製英語で呼ばれていた。 数年後にはパソコンに変わっちゃったけどね。 デパートで特設イベントかなにかをやってて、友達とそれに行って低価格で話題になったVIC2001というパソコンが展示されてたのを見たのが実物を触った最初だ。 確か10万そこそこだったと思うけどさだかでない。 そのとき一緒に行った友達の1人が謝漣方の兄貴だったんだけど、苦労しながらもキーを拾ってgameって画面に打ってゲームが出来ないって言ってた。 別にそいつが馬鹿なわけでなくてみんなのパソコンの知識なんてそんなものだったんだ。 僕も、なんかプログラムってものを組まないとだめらしいって程度の知識があっただけで、プログラムってどんなものかも知らなかったし似たようなものだったかな。 それまでコンピュータといえば、漫画ではバビル2世のコンピュータが喋ってたし、ルパンは紙テープをそのまま読んでたし、ウルトラマンではコンピュータはそのへんの電流計寄せ集めだった。 でも誰も知識もなかったし、疑問にも思わなかった。 だからキーボードがついてるどころか、どんな大きさや形したものかって認識もほとんどなかった。 実際そのころの大型機、ていっても今のパソコンの数百倍は遅かったそれの入力のほとんどはパンチカードだったし、紙テープも多く現役で使われてた。 端末としてキーボードがついてるってのはパソコンって進んでたんだ。 そんなだったから今と違ってパソコンに市民権はなかった。 値段的には本体だけなら20万以下でも買えたし、今の何十倍もするとかそんなことはなくて、どっちかといえば少し後に性能が上がっていって値段も上がったんだけど、なにしろソフトもなければ使い道もなかった。 今はパソコンを勉強すればさまざまにメリットがあると認識されてるけど、そのころは知らない人間から見たらソフトがないファミコンが30万してるようにしか見えなかったと思う。 たとえプログラム組んでお金かけてもホントにろくなことできなかったしね。 実際に喫茶店でその日の売り上げを集計したりすると、実務で使うとかでパソコン雑誌で特集組まれちゃったりしてた。 もちろん、集計ソフトは自作で、それのプログラムリストも載ってた。 パッケージソフトはほとんど存在しなかったし、ゲーム以外のパッケージソフトは本体より高かったから買えるもんでなかった。 ソフトハウスが商売として成り立つようになるのは、パソコンが少しは実用的な性能を持ってユーザーが増え、機械のトレンドも決まってくる数年後の事だ。 |
Vol.2買えない人は そのようにパソコンにはまったく市民権がなかったので、独身でもなければ買うのは子供も大人も一苦労だった。 なにしろ家族や親の承認が得られないし、説明するのも大変だ。 雑誌には貧乏パパの手づくりマイコンなんて連載もあった。 そんな買えない人の救いとなったのがワンボードマイコンと呼ばれるパソコンだ。 むき出しの基盤にキーボードは電卓みたいな16進数のキーボードと表示はLEDの8桁くらいのやつがついてる。 完成品で49800円とかキットだと39800円とかそんな値段で買えた。 半田ゴテ握って自分で組み立てると安かったんだ。 表示は全部点灯すると「88888888」となる。 べつにLEDの赤い光がcoolとかでなくて、デジタル時計が新しくて流行しだしたころで、液晶はものすごく貴重だった。 この表示だけでみんな必死にゲームとかを作ってた。 8の上の棒2本減らして椅子にみたてた「いす取りゲーム」とかが流行ったかな。 ものすごい豊かな創造力ないと椅子とは思えないんだけど。 言語はベーシックどころかアセンブラもなくて「FF E8 60 E7」とか16進数でキーボードからひたすら打ち込む。 画面もないから全部紙の上でプログラム作ってから打ち込んだ。 ソフトのセーブ用にカセットインターフェースはあったけど、市販ソフトなんかないのでみんな自作ソフトで勉強も独自にしてた。 今はパソコンの本といえば本屋のかなりの部分をしめてるけど、そのころはよほど大きな本屋でないと雑誌すらも置いてなかった。 僕も近所のパソコン雑誌を本屋で取り寄せで購読してた。 その雑誌だって広告があまり取れないので薄くて、なに載せていいかわからなくてボールペンに電卓がついたのだとか関係ない電子部品の広告だとかが載ったりしてた。 僕は秋葉原に行かれる距離だったから恵まれてたけど、地方なんて通販でパソコン雑誌買う以外の情報はなかったと思う。 そんな本の後ろにはなんとキーボードの写真を実物大で印刷した物が綴じ込みでついてた。 プログラムの本を買えても本体を買えない人のために、これでキーを打ったつもりになってくれという説明つきだ。 作り話みたいだけどホントだよ。 |